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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ヴァニティ・ケース

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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ヴァニティ・ケース

1890年代 - 日本

デザイナー
不詳
ブランド
駒井
レーベル
(平井筒に駒の字)
素材・形状特徴
鉄地に金や銀の象嵌
寸法
H. 9.0cm×W. 7.0
収蔵品番号
AC9315 1996-8-3

縦横それぞれ10cmに満たない小さな面に、蔦の葉に囲まれた名所図と花鳥図が蓋と底にそれぞれ描かれている。図柄はすべて布目象嵌と呼ばれる金工の技法で、鉄地金の表面に無数の細かい切れ目を入れ、そこに型抜きした金銀の極薄板を嵌め込むことで描かれている。象嵌の方法としては単純だが、精緻に仕上げるとなると高い水準の技巧が必要とされる。江戸時代に刀装具の装飾として発達した金工の技法である。 本品は、象嵌の手法や図案の様式から、京都で主に輸出向けの商品を手がけていた駒井の製と考えられる。駒井は、駒井音次郎を中心に精密な布目象嵌を施した西洋人向けの置物や小物入れを製作・販売していた。本品は、蓋裏の刻印が音次郎の店のものとは異なるが、音次郎の近親者の店もいくつかあり、その中の一つで作られたものであろう。

1890s