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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

女性用乗馬服

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

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女性用乗馬服

1920年代

デザイナー
ヘンリー・クリード
ブランド
クリード
レーベル
H.CREED AND Co.
素材・形状特徴
黒ウール・ツイル。カッタウエイ・ジャケット。ドロップ・フロントスタイルのジョドパーズの上に、当時の習慣である横乗り用にあらかじめ右膝を折り曲げた形にカッティングされたスカートを重ねる。
収蔵品番号
AC305 1977-12-20-AC

本品は質の高いテーラード・スーツで名高いクリード店による女性用乗馬服。テーラード・ジャケットとジョドパーズという機能的な男性服と、1930年代まで正式な女性乗馬服の決まりであった横乗り用の長いスカートという女性的な要素が混在している。英国発祥の長い伝統に培われた質の高いテーラリングと丁寧な手仕事で、重々しい肉厚の素材を機能美が備わった洗練されたシルエットに仕上げられている。
乗馬は伝統的に上流階級の特権であり、女性もたしなみとして楽しんだ。女性の乗馬服はギリシア神話に登場ずる女性騎馬戦士の名前から、フランスでは「アマゾーヌ」と呼ばれた。男性服の要素を取り入れた服だったが、女性は馬にまたがることは認められず、スカート着用の横乗りを強いられた。19世紀後半になると一般市民にも乗馬が広がり始めるが、依然女性の正式な乗馬スタイルはスカートの横乗りであった。
実際には安全性や機能性から、男性と同じようなズボンが着用されていたが、それを覆い隠すようなスカートが必需だった。第一次大戦の頃からすでにジョドパーズをはき、男性と一緒に乗馬を楽しんだシャネルのような女性もみられたが、横乗りがほとんど見られなくなったのは1930年代末になってのことである。

1920s