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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

イヴニング・コート

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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イヴニング・コート

1929年夏

デザイナー
ジャンヌ・ランヴァン
ブランド
ランヴァン
レーベル
Jeanne Lanvin, Paris, 15 UNIS. FRANCE 7, ÉTÉ 1929 (スタンプ), 612 (手書き)
素材・形状特徴
赤の絹サテン。両袖にラベンダーと黒の絹糸、金糸で刺繍。ライニングは赤の絹羽二重。
収蔵品番号
AC13125 2014-18

ジャンヌ・ランヴァンによるきもの風イヴニング・コート。両身頃のわきにはきものの身八ツ口風の明きと、袖付けから袖下までの振りの明きがあり、きものと同様に仕立てられているが、左右の前身頃に衽(おくみ)が無く、後身頃は背縫い無しの一枚仕立てである。肩線は傾斜がかかっている。しかし衿は羽織のように外向きに折り返されている。本品は西洋的な視点で日本のきものを解釈し、構成されたものだといえよう。 また、本品における唯一の装飾は、両袖の表裏前面に配した波模様の刺繡である。ラベンダー色の絹糸による細かいチェーン・ステッチ、その両側に黒の絹糸と金属の箔糸によるアウトライン・ステッチが1セットとなり、両袖の表裏あわせて長短64セットのうねりがこまやかだが大きな特徴をなしている。こうした職人技に支えられた精緻なステッチは、リボンやレースなどの装飾に代わって1920年代中頃からランヴァンの作品に現れ、1930年代にはメゾンを代表する装飾技法の一つとなった。

1920s