
20世紀後期以降、世界を注目させ現代ファッションを先導した日本ファッション。日本の独自性を世界に認めさせたデザイナーから、ゼロ年代の新たな感性を持った若手デザイナーまで、100点以上の日本ファッションを出展。その創造性を浮き彫りにし、力強いデザインに潜む文化的背景に焦点を当てます。
20世紀後半、日本ファッションは、日本経済の成長と共に世界へ羽ばたき、その独自性を開花させました。1970年代、高田賢三、三宅一生、森英恵らの活躍が欧米で注目されはじめます。彼らに導かれて、1981年、川久保玲や山本耀司がパリでデビュー。西洋ファッションの伝統的な美意識から解き放たれた日本人デザイナーの作品は〈前衛的〉と評され、賛否両論が飛び交いました。平面性、素材の重視、無彩色など、彼らの作品には、独自の才能のみならず日本の文化が長年かけて培った伝統的な感性を見ることができます。西洋中心的だったファッション界に彼らが与えた衝撃の大きさは、いまや彼らを尊敬するデザイナーが国籍問わず存在し、その〈前衛的〉だった表現がさまざまなレベルで一般化されているのを見れば明らかです。
より若い世代の日本人デザイナーたちは、時にアニメやマンガ、インターネットといったサブカルチャーと結びつき、時に高度にシステム化されたファッションの制度から距離を置くなど、社会の嗜好や変化、それらに潜む問題を感じ取ろうとしています。そこには、服と人との新たな関係性の構築を目指そうとする姿勢を見ることができます。
彼らのアイデアの具現化を素材面で支えたのは、京都に代表される高い職人技と探求心を兼ね備えた日本の工芸技術でした。本展は、デザイナーと協業して新たな作品を生み出す工房や職人の技術とそのポテンシャルを取り上げながら、世界に評価される日本のファッションの独自性を、服や映像、関連資料などで通観します。
「Future Beauty 日本ファッション:不連続の連続」展は、2010年のバービカン・アート・ギャラリー(ロンドン)を皮切りに世界5都市を巡回し、高い評価を受けた「Future Beauty」展をもとに、〈着る〉文化の伝統を守り革新し続ける京都と現代ファッションのかかわりを浮き彫りにしながら、新たに構成します。


20世紀後半、日本のファッションは、日本経済の成長と共に世界に羽ばたき、その独自性を開花させました。川久保玲と山本耀司が1980年代初頭にパリで発表した作品は、欧米の美意識から解き放たれたその表現から〈前衛的〉と評され、賛否両論が飛び交いました。
彼らが好んで用いた色調は、谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で語る「光りと蔭との使い分け」、あるいは墨絵にも似た黒の極めて豊かな階調表現でした。それは、多彩な色が溢れていた当時の欧米ファッションに対するアンチテーゼとして、世界に「黒の衝撃」を引き起こします。この時の主調色・黒は、日本ファッションの代名詞となり、20世紀後期の時代の色となったのです。

日本ファッションはしばしば、フォルムがない、と評されます。そこには、日本人デザイナーが女性の身体を際立たせる西洋的な衣服構成にとらわれていないという意味も込められていました。平面的な構成を自由に操り、いわば身体を理性的に彫塑しない彼らの服は、身体と服との間に空間、〈
間〉を生み、時には身体から離れた自由な造形を生み出します。
日本の着物に特徴的な平面的構造は世界各地に見られますが、これを知的な現代服に昇華させたのは、三宅一生の「プリーツ・プリーズ」でした。川久保玲は初期の作品に見られるこの特徴を、近作でも明らかにしています。また、平面から立体を形作る折り紙の思考法も日本人デザイナーに特徴的な服作りへのアプローチといえます。
西洋が長く求めてきた構造の秩序から離れて別種の構造を提示した彼らの創作は、ファッションを服飾造形の新たな次元へと導いたのです。

素材に対する日本人デザイナーの鋭い感性は、世界から高い評価を受けています。三宅、川久保、山本らは早くからテキスタイル・デザイナーとの協働による素材の開発に着目し、独自性のある服を作ってきました。その姿勢は、より若い世代の渡辺淳弥、マトフらにも明確に見られます。
新しい表情や質感、機能性を求めるデザイナーの要求に、日本の繊維業界は高度な染織技術と先端テクノロジーで応えてきました。中でも京都は、伝統文化が育んだ高い職人技と新しい技術を取り込み進化させる探求心を兼ね備えた歴史的風土から、多くのデザイナーとの取り組みを行っています。日本ファッションは、デザイナーの創造力と日本の伝統が交差した地点で生み出されます。

インターネットの普及やファスト・ファッションの隆盛によって、現在の私たちはファッションを手軽に楽しむことができます。裏を返せば、モノや情報が瞬時に容易に「消費」される時代であるといえます。そうした流れの中にあって、若い世代のデザイナーたちは、生産プロセスへのこだわりという日本ファッションの伝統を受け継ぎながら、サブカルチャーからの引用、あるいは独自の物語(ストーリー)やコンセプトを、服に織り込んでいきます。
彼らの多くは、着る人が日常的な行為の中で彼らの服作りの姿勢に気付き、共感してもらう服を作り出そうとしています。それは、着る人が服と対話しながら、作り手から託された物語の続きを紡いでいくことができる服ともいえるでしょう。失われつつある一着の服、一切れの布の価値、そして服と人の根源的な関係が、今、見直されつつあります。

本展は、20世紀末以降、世界が熱い視線を向けた日本人デザイナーの衣装作品、約100点を中心に展覧します。
同時に、写真やコレクション・ショー映像、また、DM、パンフレット、コレクションの招待状等のプリント・マテリアルにより、日本ファッションが伝えた創造の概念と、それが創り出した前衛的なイメージを重層的に展示します。
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ホンマタカシ、横尾香央留


PARASOPHIA+Future Beauty共同プロジェクト
クリス・デルコン(テート・モダン館長)「21世紀のための美術+建築—テート・モダン」
日時:4月4日(金)19時~20時半(18時半開場) ※終了しました
会場:京都国立近代美術館 1階 ロビー
定員:先着150名(当日17時から1階インフォメーションにて整理券を配布) 聴講無料 日本語逐次通訳つき

講師:串野真也(Masaya Kushinoデザイナー)×細尾真孝(株式会社細尾 取締役)
「京都の伝統、現在から未来へ―革新と挑戦」
日時:3月22日(土)14時~15時半(13時半開場) ※終了しました

講師:森永邦彦(ANREALAGE デザイナー)
「色を着る、色を脱ぐ―アンリアレイジと京都の技術」
日時:4月19日(土)14時~15時半(13時半開場) ※終了しました

講師:堀畑裕之+関口真希子(matohuデザイナー)
「いま、輝く燈し火を―伝統とモードをつなぐ」
日時:5月3日(土)14時~15時半(13時半開場) ※終了しました
- 会場
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- 京都国立近代美術館 1階 講堂
- 定員
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- 各100名 *聴講無料 *未就学児の入場はご遠慮ください
- お申込方法
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- 事前申込制(定員に達し次第締切)
- お問い合わせ
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- 京都服飾文化研究財団(KCI)
- 連絡先
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- TEL:075(321)9221(受付時間は平日(月)~(金)の9時半~17時)
- お申込開始日
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- 第1回:2月24日(月)、第2回:3月17日(月)、第3回:4月7日(月)

「キッズ・ファッション・ファクトリー~えがいて、切って、Tシャツをつくろう~」
日時:4月20日(日)14時~16時(終了予定) ※終了しました
会場:京都国立近代美術館 1階 講堂
対象:園児~小学生(低学年以下は要保護者同伴)
参加費:500円(材料費として)
注意事項:汚れてもよい服装でお越しください。(特殊な絵の具を使用します)
定員:15名
お申込方法:事前申込制(定員に達し次第締切)
お申込・お問合せ先:京都服飾文化研究財団 ℡075-321-9221(受付時間は平日(月)~(金)の9時半~17時)
お申込開始日:3月17日(月)

シアタープロダクツがプロデュースするプロジェクト「シアターユアーズ」のワークショップです。KCIのアーカイブイメージとシアタープロダクツのパターンがプリントされたテキスタイルの中から好みの1枚を選び、服を作ります。
日時:①4月12日(土)13時~16時(終了予定) ※終了しました
②4月13日(日)13時~16時(終了予定) ※終了しました
会場:京都国立近代美術館 1階 ロビー
対象:どなたでも(小学生以下は要保護者同伴)
参加費:1,500円
定員:各回10名
注意事項:制作にはミシンを使用し、工程により時間が延長する場合があります。
サポートスタッフがおりますので、初心者の方でもご参加いただけます。
お申込方法:事前申込制(定員に達し次第締切)。3月17日より受付開始。
お申込・お問合せ先:京都服飾文化研究財団 ℡075-321-9221(受付時間は平日(月)~(金)の9時半~17時)

会期中(2014年3月21日~5月11日)、団体のお客様に対し、事前レクチャーを開催。
京都服飾文化研究財団の学芸員が、展覧会の概要および見どころを解説いたします。
【美術館レクチャー】
京都国立近代美術館の講堂にてレクチャー(10名様以上)
レクチャー時間:約20分 会期中の10時~16時(閉館日を除く)
お申込み方法:事前予約制(お申込みは3日前の17時まで)
※会場内での作品解説ではありません。
※レクチャー後、各自で自由に展覧会を鑑賞いただきます。
【出張レクチャー】
ご所属の学校・企業などでレクチャー(20名様以上)
レクチャー時間:約30分(応相談)
お申込み方法:事前予約制(お申込みは7日前の17時まで)
※出張レクチャーは特別鑑賞券をお求めの団体様に限ります。
※京阪神地区に限ります。
《特別鑑賞券のご案内》
入場料金は団体入場券と変わりませんが、以下の特典があります。
■特別鑑賞券 招待券一枚進呈(20枚につき)。一括入場の必要なし。20枚以上での販売、事前購入のみ。
(団体入場券 当日使用・20名様以上の一括入場が条件。京都国立近代美術館の窓口での販売。)
※特別鑑賞券は会場の京都国立近代美術館では取り扱っておりません。京都服飾文化研究財団の事務局で販売しています。詳しくは
『特別鑑賞券購入のご案内』をご覧ください。
お申込・お問合せ:公益財団法人 京都服飾文化研究財団(KCI)
〒600-8864 京都市下京区七条御所ノ内南町103
TEL:075-321-9221(受付時間は平日(月)~(金)の9:30~17:00)


『Future Beauty 日本ファッション:不連続の連続』
企画・構成:深井晃子(京都服飾文化研究財団)
編集:石関亮、新實五穂
周防珠実、新居理絵、筒井直子、友成久実子、
福嶋英城(京都服飾文化研究財団)
カタログ・デザイン:西岡勉
作品撮影:畠山崇、林雅之、広川泰士、福永一夫、市川靖、小野祐次、
Richard Haughton
翻訳:京都服飾文化研究財団、有限会社フォンテーヌ
編集協力:木村しのぶ(福本事務所)
印刷・製本:日本写真印刷株式会社
発行:京都服飾文化研究財団、2014 年3 月20 日初版発行
版型:B5 版、226 頁
価格:2,000 円+消費税
『Future Beauty:日本ファッションの未来性』
監修:深井晃子(京都服飾文化研究財団)
編集:キャサリン・インス(バービカン・アート・ギャラリー)
新居理絵(京都服飾文化研究財団)
出版:平凡社 2012年
ISBN:978-4-582-62054-2
価格:2,800円+消費税

『+Future Beauty: 日本ファッションの未来性』
監修:深井晃子(京都服飾文化研究財団)
編集:石関亮、蘆田裕史(京都服飾文化研究財団)
出版:平凡社 2012年
ISBN:978-4-582-62055-9
価格:1,000円+消費税