KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ウエストコート

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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ウエストコート

1730年代

素材・形状特徴
ベージュの絹タフタに多色の絹糸と金糸、銀糸による草花模様の刺繍。スリーブレス。コイル状の金糸を巻き付けた8個のボタン。後ろ身頃は麻の平織り。
収蔵品番号
AC3862 81-18-2

18世紀の男性用ウエストコート(ベスト)。胸元から裾にかけて色とりどりの華やかな花々が刺繍されている。刺繍糸には先染めした絹糸に加えて金糸、銀糸が使われ、柄に応じて糸の種類やステッチを変えることで表情豊かに仕上げている。
ウエストコートは、「ジュストコール」と呼ばれるコートと共に17世紀から宮廷服として着用され始めた。元々はコートと同程度の丈で袖付きが通例であった。前身頃と袖口には装飾豊かなテキスタイルが用いられ、コートの前明きからその豪華さを垣間見ることができた。その後、徐々に丈は短くなり、18世紀半ばからは本品のような袖なしのデザインが定着するようになる。18世紀を通してコートの前裾のカットが両脇に向けて広がっていくにしたがい、ウエストコートの装飾も視覚的な重要さを増していく。装飾の技法としては、重厚な織り柄から、刺繍を中心とした軽やかで繊細なモチーフが好まれるようになった。

1700s-1750s