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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

クロッシュ

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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クロッシュ

1925年頃

ブランド
マドレーヌ・パニゾン
レーベル
MADELEINE PANIZON Paris
素材・形状特徴
赤いウールのクロッシュ(帽子)。毛糸と絹糸による刺繍。
収蔵品番号
AC12614 2011-22-2

ブリムの無い、ヘルメットのようなフォルムは1925年頃の流行のスタイルである。クラウンの最下部を折り返してパネルに見せかけた装飾も洗練され、都会的である。しかし緋赤をベースに青、黄、緑という強いコントラストを示す色彩は野獣派の絵画を想わせ、絹糸と毛糸を使った刺繍は奔放にうねり絡まりあう草花のデザインを描き出す。中央アジアやイスラム圏の刺繍を想わせるこの刺繍は土着的、工芸的な味わいを見せ、アール・デコの東洋趣味と呼応する。
本品を製作したモディスト(婦人帽子のデザイナー)マドレーヌ・パニゾン(本名はマドレーヌ・ビュイッセ 生没年不詳)は、ポール・ポワレがウィーン工房に影響を受けて設立した工芸学校、アトリエ・マルティーヌに学んだ。1920年代、パリのポンチュー通りに帽子店「マドレーヌ・パニゾン」を構えた。顧客を制限し、ほとんど広告も出さなかったが、1925年に開催されたいわゆる「アール・デコ」展ではファスナーやハトメをデザインに生かした飛行機・自動車用の斬新な帽子を出品して名誉賞を受賞するなど、そのモダンで先鋭的なデザインは高く評価された。1920-28年頃には、ポワレのメゾンのために帽子を製作しており、本品もその時代の作品と考えることができる。

1920s