KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

デイ・ドレス

© The Kyoto Costume Institute, photo by Taishi Hirokawa

画像にマウスカーソルを乗せると拡大します。

デイ・ドレス

1897年頃

デザイナー
ジャック・ドゥーセ
ブランド
ドゥーセ
レーベル
DOUCET
素材・形状特徴
グレーのウール・ツイルのツーピース・ドレス。トレーンを引く。アイリスの花と葉をかたどった布地を配している。衿元に絹シフォン、スカート裾に絹サテン。
収蔵品番号
AC10426 2001-1-2ACB

肩やスカートなどにアイリスの柄を配したドレス。西洋においてアイリスは紋章の要素として用いられていたが、19世紀後半には『芸術の日本』誌などで尾形光琳の画風の一つとして紹介されるなど、日本的なモチーフと認識されるようになり、絵画や工芸、テキスタイルの装飾に頻繁に登場するようになる。
間隙なく並んだアイリスの柄は、日本では群生したカキツバタを想起させ、文様図案や浮世絵版画などにみられるように、きものの柄として用いられる。また、光琳作の《八橋図》(メトロポリタン美術館蔵)など絵画の主題としても描かれている。柄のアシンメトリーな配置も日本の文様デザインからの影響を指摘することができる。
ドゥーセ店は1817年頃に設立。レースや下着の制作・販売から始まり1870年頃にクチュール事業を手がける。70年代からドゥーセ店のデザイナーとなり、クチュール店としての名声を高めたジャック・ドゥーセは、アート・コレクターとしても鑑識眼を大いに発揮し、日本を含む東洋美術も多数収集していた。ジャポニスムの動向を的確にとらえ、自身のデザインに巧みに取り込んだドゥーセの先進性を本品から見て取ることができる。

1890s