KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

デイ・アンサンブル

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

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デイ・アンサンブル

1997年春夏

デザイナー
山本耀司
ブランド
ヨウジヤマモト
レーベル
Yohji Yamamoto
素材・形状特徴
[左]ジャケットとスカートは黒、グレイ、白の絹ツイード。ジャケットに黒のレーヨン・ベルベットの装飾。白の絹サテンのボウ付きブラウス。帽子とパンプスはツイード。[右]ジャケットとスカートは黒、白の絹ツイードに金色のシークインの刺繍。白の絹サテン・クレープのブラウス。帽子とパンプスはツイード。
収蔵品番号
AC9423 97-5-1AF(左)、AC9424 97-5-2AF(右)

働く女性、ガブリエル・シャネルが創った20世紀を代表する女性服のスタイルのひとつ「シャネル・スーツ」。それは発表から時を経て、次第に保守的なイメージをもまとうようになった。山本耀司は「シャネル・スーツ」に敬意を払いつつ、彼なりの解釈でアップデイトした。ジャケットの身幅はやや広く取り、スカートの裾は裁ち切りのままほつれを残したり、カフの長さや襟の大きさ、スカートの丈などをアンバランスに変えたりすることで、快適性や日常性、デザインにおける遊びの要素を付け加えている。無頓着なように見えて隅々まで計算が行き届いた装いは、ガブリエル・シャネルが現代に蘇ったかのよう。
山本は1983年春夏で、無彩色、だぼだぼ、穴あきの服を発表した。それは西洋の伝統的な服作り否定するものと思われがちだが、その後の活動を見れば、彼が西洋の服作りの伝統を肯定的に捉えていることは明白である。テイラードな仕立てを尊重し、シャネルたち過去のクチュリエたちにオマージュを捧げ、彼らの創作を現代的なファッションに再生する。山本は、ただ、伝統に縛られて硬直化した美意識を見過ごせないのであり、オーバーサイズや裁ち切りは現代的な再生の手段に過ぎない。彼もまた、シャネルのように知的でスポーティで粋な現代のエレガンスを追求する一人である。

1990s