KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ジャケット

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

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ジャケット

1997年秋冬

デザイナー
マルタン・マルジェラ
ブランド
メゾン・マルタン・マルジェラ
レーベル
(白の綿の布)
素材・形状特徴
白の紙。数字のプリント。前身頃、後身頃、袖のパターンは各2枚。左胸に紐と金具付き。
収蔵品番号
AC13379 2016-4-1AB

サイズを示す「42」の数字、あるいは「VESTE COTE(ベストコート)」、「MANCHE(袖)」の文字、生地の方向を示す矢印。本品は、衣服のパターン(型紙)で構成されたジャケットである。パターンは、衣服の各部分のかたちや大きさ等、布地の裁断に必要な情報が記され、一枚の平面が立体となるための型の役割を果たす。しかし、マルジェラは、本来完成したあとには顧みられないパターンを、衣服そのものとして提示する。ストックマンの人台を模ったジャケット(AC9427)が発表された1997年春夏コレクションと連作の本コレクションにおいては、本品をはじめ、試作の際に用いられるピンやしつけ糸をそのまま留めた衣服がランウェイに登場する。型紙を用いた本品は製品からは不可視となる製作現場を暗示し、衣服にとって「完成/未完成」とは何かをわれわれに突き付ける。職人の手仕事に敬意を示し、既製服産業をアイロニカルに捉えた彼は、衣服と型紙の関係性を転覆し、「型紙が衣服になること」の二重性を問うたのだ。

1990s