
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama
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デイ・アンサンブル「Miss No.5」
2017年秋冬
- デザイナー
- デムナ・ヴァザリア
- ブランド
- ヴェトモン
- レーベル
- VETEMENTS POUR FEMME TAILLEUR HIVER 2018 PRET-A-PORTER
- 素材・形状特徴
- ベージュの綿と化繊のツイード。白の化繊にロゴを織り出したボウ付きブラウスがジャケットと一体化。ジャケットと共布のスカート。裾は切りっぱなし。裾部に刺繡。
- 収蔵品番号
- AC13657 2018-23AB
「シャネル・スーツ」のスタイルを踏襲しているが、ブラウスの衿元や裾はだらしなく見えるよう意図して仕立てられている。切りっぱなしのスカート裾には「longueur genou(膝丈)」という仏語と、鋏と切り取り線の刺繡が施され、私たちの笑みを誘う。本品は、デムナ・ヴァザリア率いるヴェトモンがパリのオートクチュール・コレクションの公式スケジュールで発表したプレタポルテ・コレクションの一点。「シャネル・スーツ」さえ着れば安心、着ている人なら安全とする私たちの月並みな思考=ステレオタイプを笑うかのようでもあり、ガブリエル・シャネルが創りあげて一般化したこのスタイルが実は着る人の高度な洗練を要求する服であると暴くかのようでもある。フランス語で「服」を意味するブランド名の素っ気なさと響きあうような、平凡な人々のリアルな日常着に関心を寄せ、フード付きパーカをはじめとするありふれたアイテムをファッショナブルな服として提案してみせる。現代美術の一手法、アプロプリエーションを想わせる方法論は、かつてヴァザリアが薫陶を受けたマルタン・マルジェラからの影響とみることができる。その彼らでさえ、ストリートをリアルに表現する際に「シャネル・スーツ」を取り上げざるを得なかったと考えるとき、シャネルが創造したスタイルの重要性と影響力を再認識させられる。
2010s
KCI