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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

帽子

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takeru Koroda

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帽子

1890年代

ブランド
ホリデイ・サン社
素材・形状特徴
ストロー製。絹製の花とリボン、染色したダチョウの羽根。
収蔵品番号
AC1393 78-37-107

幅41cmの大きな帽子からこぼれ落ちんばかりの大量の装飾が特徴的である。約13cmと極端に小さいかぶり口のサイズから、1890年代に流行した高く結い上げたシニョンの上に載せるタイプの帽子とわかる。英国の大都市、バーミンガム初の百貨店「Warwick House」の名がレーベルに記されている。
フランスの作家、エミール・ゾラがパリの百貨店の関係者に取材調査の後に書き上げた小説『ボヌール・デ・ダム百貨店』(1883年)には、百貨店のごく近所に住む顧客を意味する「帽子をかぶらない女性たち」という表現が登場する01。それは逆説的に、紳士淑女にとって帽子が外出時の必需品だったという事実を示す。ゾラは店内の混雑を「ただ羽やリボンを飾った色とりどりの被り物だけが浮き上がって見えた。その中に男性の帽子がいくつか黒い染みのように点在していた。」と描写している02。市民階級の消費欲を満たす百貨店や通信販売などの新しい流通システムが欧米で発展した19世紀後期、帽子はそれらの重要な商品の一つだった。軽量な鳥の羽根は帽子の装飾として古くから使われてきたが、その消費量は拡大する。

01 | エミール・ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』伊藤桂子訳、論創社、2002年、p. 119.
02 | 前掲書 p. 139.

1890s