© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

Collection 08

コム デ ギャルソンComme des Garçons

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

トップ、スカート1997年春夏

二重になったストレッチ素材にパッドを内蔵したドレス。身体の線と服が一体化する「ボディ・ミーツ・ドレス ドレス・ミーツ・ボディ」コレクションの一点。
20世紀ファッションは、何よりも自然な身体の美しさを重視してきた。しかしそれは、一方で、衣服造形を制限することにもなった。川久保は、身体が服を縛る、服が身体を縛る、といった互いの発展を封じる停滞した関係からの脱出を試みて、本品に見られる新鮮な造形美を作り出し、世界に衝撃を呼んだ。舞踏家、マース・カニンガムはこれに刺激されてダンス『シナリオ』(1997年)を生んだ。
「すでに見たものでなく、すでに繰り返されたことでなく、新しく発見すること、前に向かっていること、自由で心躍ること。」(1997年春、コム・デ・ギャルソンのDM)川久保は新しい表現に挑み続け、常に時代の先端にいる。

    デザイナー川久保玲

    ブランドコム デ ギャルソン

    素材・形状特徴多色のポリエステル/ポリウレタン・ストレッチ・オーガンジー。肩、背面にフェザーとダウンのパッド。

    収蔵品番号AC9416 96-32-12AB

セーター <br>スカート
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

セーター
スカート
1983年秋冬

川久保の初期を代表する作品。セーターは幅広のニットのパネルを交互に組み合わせることによってドラマチックな立体感を表現し、陰翳を生みだしている。不定形でいびつだと評された服は、しかし存在感のある静かな美しさをたたえている。
豊かな色彩がファッションに溢れていた1980年代初頭、川久保は黒を中心とした無彩色の、非構築的な服をパリで発表した。西欧の既存の美意識から外れた川久保の服は「ベガー(物乞い)・ルック」と呼ばれたが、それはみすぼらしさを容認する日本的な美意識の表現であり、その色は墨絵にも似た黒の静謐な諧調表現だった。西欧の色彩表現の範疇に収まらない新しい表情を持つ黒は注目され、80年代、時代の色となった。

デザイナー川久保玲

ブランドトリコ コム デ ギャルソン(セーター)
コム デ ギャルソン(スカート)

レーベルtricot COMME des GARÇONS (セーター)
COMME des GARÇONS (スカート)

素材・形状特徴セーターは黒のウール・ニット。スカートはウールとナイロンの混紡ニット。袋状のパネル装飾。

クレジット・ライン株式会社コム デ ギャルソン寄贈

収蔵品番号AC7843 1993-24-51, AC7824 1993-24-32

セーター、スカート
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

セーター、スカート1983年秋冬

川久保の初期を代表する一点。複雑に交差するセーターは、基本的に直線のパネルで構成されて、力強い量感を示している。たっぷりとしたゆとりは、左右に広げた袖は着物の袖を想わせる。スカートは、セーターのゆとりやたるみが生み出す不定型な形に呼応して、アシンメトリーにたわんでいる。
川久保は、1980年代はじめ、無彩色、ぶかぶか、アシンメトリー、意識的な穴や破れを施した、西欧の既存の美意識を覆す作品によってパリで賛否両論を巻き起こした。その後も、既成概念にとらわれないという一貫する姿勢を服に具現化していった。

デザイナー川久保玲

ブランドコム デ ギャルソン

レーベルtricot COMME des GARÇONS(セーター)、COMME des GARÇONS(スカート)

素材・形状特徴生成のウール・ニットのセーター。ガーター編み、裾はゴム編み。生成のウール・ジャージーのスカート。

クレジット・ライン株式会社コム デ ギャルソン寄贈

収蔵品番号AC7842 93-24-5AB

ドレス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス1991年秋冬

クリノリンを思わせる西洋的なフォルムのスカートに、友禅の絵師によって日本的な図柄が荒い筆致で自由に描かれた。アンダードレスにきもの特有の綿入れの赤い裾(袘)を入れることで、ドレスにアクセントが置かれ、同時に程よい重量感となってシルエットを美しく保っている。
このコレクションのキーワードは「シック・パンク」「ビニール」「綿入り」「ノワール」。既存の価値観に対抗する新しい創造を表現した。このコレクションの最後を飾ったのが、本品を含めた日本を連想させるイヴニング・ドレスだった。川久保は、制作意図を「非常にフォーマルなイヴニング・ドレスと、非常に素朴な子供らしい筆遣いを並置したかった」(『ヴォーグ(米)』1991年7月号)と語っている。
東西の伝統的な美を新たな表現へと変容させたこのドレスは、美意識を刺激し、興味をそそるものすべてが彼女の発想源となりえることを示している。

デザイナー川久保玲

ブランドコム デ ギャルソン

レーベルCOMME des GARÇONS NOIR

素材・形状特徴黒のシルク・タフタ。スカートに手描きの鶴。赤の袘。肩が露出したクリノリン風ドレス。

ドレス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス2018年春夏

手足が隠れるほどたっぷりと体を包み込む大ぶりの形状のドレスに、大きな瞳の少女とその周囲で咲き誇る花々のイラストがインクジェットで色彩豊かにプリントされている。日本の少女マンガを想起させるイラストは、1950年代から80年代にかけて少女雑誌の表紙や挿絵などを手掛け、今や世界的に広がる日本発「かわいい文化」の立役者の一人である高橋真琴によるもの。高橋の絵は、大きく引き伸ばされることで、愛らしさだけでなく視覚的な強烈さを感じさせる。かわいらしさと力強さの融合、あるいはかわいらしさの中に潜む過激さや過剰さの表現を試みるデザイナー、川久保玲の作風が端的に表れた作品となっている。
本作が発表された2018年春夏コレクションのテーマは「マルチディメンショナル・グラフィティ」。高橋の他にも、16世紀イタリアの画家、ジュゼッペ・アルチンボルドや日本の戦国時代の水墨画家、雪村の作品などが服にプリントされた。古今東西、異なる時代や場所から集められた2次元のイメージは、恣意的に編集され、生地と共に切断され、3次元の服の形に再構成される。そこには、都市空間に突如現れるグラフィティ・アートがもつ脈絡のない自由さと強靭さを見ることができる。

デザイナー川久保玲

ブランドコム ギャルソン

素材・形状特徴絹ポリエステル・キャンバスにイラストのインクジェット・プリント。リボン装飾とドット柄のトレーン。

収蔵品番号AC13624 2018-11-2A