© The Kyoto Costume Institute, photo by Richard Haughton

Collection 04

ジャポニスムJaponism

© The Kyoto Costume Institute, photo by Richard Haughton

ドレス1870年代





ロンドンで仕立て直された日本の着物によるドレス。生地には着物の縫い線の痕跡が見える。アンダー・スカートが欠落しているが、別布によるものが組み合わされていたと考えられる。他にも本来の装飾が欠落していると思われる箇所がある。
19世紀後期、日本から渡った着物や染織品は多くの人々を虜にした。西欧の女性たちは、日本の着物地や着物をほどいたものをドレスに仕立てたり、着物を室内着として着用した。本品のような江戸時代末期の上流武家階級の女性の着物は、特に好まれたものの一つだった。

    デザイナー不詳

    ブランドターナー

    レーベルMISSES TURNER COURT DRESS MAKERS 151 STREET

    素材・形状特徴白紗綾型紋綸子地に藤、菊、牡丹、唐団扇柄を絹糸と金糸の刺繍と型しぼりで全面に装飾。ボディスとオーバー・スカートのみ現存。ボディスのくるみ釦は、巴文風。

    収蔵品番号AC8938 93-28-1AB

ヴィジット
© ©The Kyoto Costume Institute, photo by Richard Haughton

ヴィジット1890年頃 - フランス

日本の文様がパリ・モードに引用された興味深い例。日本のモチーフである兜と桜が垂直に配され、モチーフは絹糸で織り出された別布をコード刺繍でカシミアの上にアップリケした、非常に手がこんだものである。対をなす横向きの兜は、西欧的なシンメトリーにレイアウトされている。
ヴィジットは、当時流行していたバッスル・シルエットのために登場したコートの一種。

素材・形状特徴
オフ・ホワイトのカシミア・ツイル。兜、檜扇、蝶、しだれ桜などのモチーフが絹糸で織り出された別布をコード刺繍でアップリケ。衿、前打ち合わせ、後ろのスリットに羽根飾り。

収蔵品番号
AC5367 86-17-7

イヴニング・ドレス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Richard Haughton

イヴニング・ドレス1894年頃

すっきりと広がるスカートと大きく膨らんだエレファント・スリーブは、1895年頃の典型的なシルエット。スカートに大胆に施された陽光と雲のデザインには、日本の美術・工芸品のデザインに特徴的な非対称性が見てとれる。
19世紀後期、ジャポニスムの隆盛を背景に着物やそのデザイン見本帳である「雛形」が西欧に渡った。そこに示された日本の文様や左右非対称の構図は、本品のようにパリ・オートクチュールにも新しいデザインとして吸収されていった。

デザイナーシャルル=フレデリック・ウォルト

ブランドウォルト

レーベル無し

素材・形状特徴アイボリーの絹サテンのツーピース・ドレス。ジゴ袖。衿ぐり、胴部にペール・ピンクの絹シフォンの装飾。スカート前面に左右非対称の構図で表現された陽光と雲のモチーフは、ペール・ピンクの絹チュールのはめこみとビーズ刺繍による。

収蔵品番号AC4799 84-9-2AB

イヴニング・コート
© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

イヴニング・コート1913年頃

打掛のようなシルエットのコート。当時のファッション誌で「マントー・ジャポネ」と呼ばれたこのシルエットは、浮世絵に描かれた花魁、あるいは歌舞伎役者の打掛を思わせる。大胆な縞の衿は、歌舞伎衣装の伊達衿だろうか。ビーズ刺繍で表現された花のような文様は花勝見(はなかつみ)と呼ばれ、江戸後期に、歌舞伎役者が好んだことから流行した日本の伝統的な文様とも見える。だが、背面のボーダー飾りは古代地中海の文様とも似ており、パルメットといえるかもしれない。本品は、1910年代初めの流行である東洋風の折衷的要素が詰め込まれたコートである。 エイミー・リンカー店は、1900年、パリで開店。コートやスーツを得意とし、20世紀初期にはファッション誌に頻繁に新作が取り上げられていた。1920年代にはスポーティなファッションを提案したことで知られる。

デザイナーエイミー・リンカー

ブランドエイミー・リンカー

レーベルAMY LINKER LINKER & Co. Sps. 7 RUE AUBER PARIS

素材・形状特徴黒の絹サテンと黄緑の絹クレープ。黒と緑の絹サテンを段に折り重ねた衿。花文あるいはオリエンタル・モチーフのビーズ刺繍。

収蔵品番号AC3775 81-8-1

イヴニング・ドレス
© ©The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

イヴニング・ドレスジョルジュ・ドゥイエ  1913年頃

身頃に縫いとめたサッシュ・ベルトは兵児帯(へこおび)のようであり、袖はキモノ・スリーブである。これら本品に見られる要素は、1907年頃から登場するきもの風ドレスの傾向を顕著に示している。とりわけ1913年頃には本品のような幅広のサッシュ・ベルトが女性誌に数多く登場している。
フランス人のジョルジュ・ドゥイエ[1865-1934]はキャロ姉妹店の営業責任者として活躍した後、1900年、パリのヴァンドーム広場にオートクチュールメゾンを開店した。時代が要請した優雅で装飾性の高いドレスを提案したが、1909年前後には古代ギリシアの「アテナイ人のフレキシブルな衣服を今日風に改めた」(『ラ・ヴィユ・ルミエール』1909年、パリ、p.77)と表現された。より簡潔なラインの作品を発表。ポール・ポワレが牽引した新しいファッションに俊敏に反応するドゥイエの姿をうかがうことができる。

デザイナージョルジュ・ドゥイエ
ブランドドゥイエ
レーベルœDuillet 18 PLACE VENDOME PARIS

素材・形状特徴ブルーのベルベット。サッシュ・ベルトのようにはめ込んだシルク・サテンに花柄を金糸とビーズで刺繍し、背中で結んだ帯風。キモノ袖。胸、袖口にレース飾り付き。収蔵品番号AC9313 96-8-1

コート
© ©The Kyoto Costume Institute, photo by Kazumi Kurigami

コートマリアノ・フォルチュニイ 1910年代

豪華な室内着である。ステンシル・プリントによる立涌に蝶と葵の葉の文様は、日本の生地を写している。フォルチュニイは、様々な時代や地域から文様のデザイン・ソースを求めたが、その中には日本のデザインも含まれていた。本品のテキスタイルは、『芸術の日本』(1888年第2号)に掲載され、後に『エトフ・ジャポネーズ』(1910年)にも掲載された紋織ビロードの日本の帯地(現在、その帯地はパリ装飾美術館に収蔵されている)とほとんど同じデザイン。本品ではステンシル・プリントで柄を表現していている。ゆったりとした開放感を持つ日本の着物は、19世紀末から西欧で室内着として着られるようになる。欧米でも着物のイメージを採り入れた室内着やコートが作られた。

デザイナーマリアノ・フォルチュニイ

ブランドフォルチュニイ

レーベル無し

素材形状特徴薄茶のベルベットに多色のステンシル・プリント。立涌蝶葵文様。ライニングはサーモンピンクの絹ファイユ。布幅をいっぱいに使った直線裁ちの後ろ身頃と、2分の1幅の前身頃2枚で構成される。

収蔵品番号AC7771 93-19

デイ・ドレス
© ©The Kyoto Costume Institute, photo by Kazumi Kurigami

デイ・ドレスマドレーヌ・ヴィオネ 1924年

手縫いのピン・タックが筒型の身頃全体に施されている。一見すると単純だが、今日では再現不可能なオートクチュールならではの精巧な手仕事によって実現された。ピン・タックは装飾性と機能性を兼ね備えたものとして用いられている。ここに、「シンプルであるということは、複雑なものをすべて含んでいる」と語ったヴィオネの衣服制作の真髄を垣間見ることができる。早くから身体の解放を目指していたヴィオネは、日本の着物の直線的な形態に啓示され1910年代後半から着物の構造に目を向けた衣服制作を展開し、女性の身体性を新たな解釈で際立たせる衣服の新しい構成概念を打ち立てた。1920年代のヴィオネの頂点を成す記念碑的作品である。

デザイナーマドレーヌ・ヴィオネ


ブランド
マドレーヌ・ヴィオネ


レーベル
Madeleine Vionnet


素材・形状特徴
グリーンの絹クレープのワンピース・ドレス。直線的なシルエット。ボート・ネックライン。身頃全体に手縫いのピン・タックが施され、肩から腰までは波模様、腰から裾までは直線を描く。


収蔵品番号AC8947 93-32-5