© The Kyoto Costume Institute, photo by Taishi Hirokawa

Collection 05

オートクチュールHaute Couture

© The Kyoto Costume Institute, photo by Taishi Hirokawa

イヴニング・ケープ1938年

スキャパレリらしいダイナミックさを見せている豪華なイヴニング・ケープ。1930年代、スキャパレリはダダやシュルレアリスムといった当時の美術界に接近し、そこから多くのインスピレーションを得た。本品もその代表的な例である。金糸やシークインなどで立体的に刺繍された馬車で天空を翔けるギリシア神話の神、アポロンは、画家、舞台装飾家としてパリで活躍したクリスチャン・ベラールのデザイン。オートクチュールの至芸の一端を担う刺繍は、1924年に開店した刺繍工房ルサージュによる。

    デザイナーエルザ・スキャパレリ

    ブランドスキャパレリ

    レーベル無し

    素材・形状特徴黒のベルベット。バイアス使いの布を3枚接ぎ。金糸、シークイン、ビーズでアポロン神、馬、雲を刺繍。

    収蔵品番号AC9227 95-19-1

スーツ、チョーカー
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

スーツ、チョーカー1997年秋冬

究極のボディ・コンシャス服である。ジャケットの異様に高い衿こし、シャープな衿のライン、細いウエスト、曲線を描いて張り出す腰。メゾンの創始者であるクリスチャン・ディオールが得意とした美しいラインを彷彿させるこの服は、オートクチュールの繊細な技術を駆使して実現された。ボンデージ服ともいえるような完璧なフォルムは、西欧の服が伝統的に持つ身体の拘束性という要素を意図的に誇張しているかのようである。
ガリアーノは1996年から「ディオール」のデザインを手掛ける。歴史的、民族的な衣装、あるいはストリート・ファッションから自由に発想を得つつ、それらのディテールを自在にリミックスした現代的な作品を得意とする。古典的な優雅さを固守してきたディオール・ブランドを若返らせ、90年代のブランド・ブームを牽引した。

デザイナージョン・ガリアーノ

ブランドクリスチャン・ディオール

レーベルChristian Dior HAUTE COUTURE PARIS (スタンプAH97 29374)

素材・形状特徴グレイのウール・ツイードのジャケットとスカート。ジャケットの裾にパッド。ロング・スカートはトレーンをひく。チョーカーは銀色の輪が35段つながる。

収蔵品番号AC9559 98-13AC

コート・ドレス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

コート・ドレス1947年秋冬

本品は、「ニュー・ルック」で衝撃的なデビューを果たしたクリスチャン・ディオールが次のシーズンで見せた新たな展開。野性的な豹の毛皮とエレガントなシルエットが不思議な調和を見せている。
1947年、優しい肩、細いウエスト、たっぷりと広がるスカートという懐古的で優雅なディオールの初コレクション「ニュー・ルック」は、第二次世界大戦の耐乏の服とは正反対の服であった。平和な時代の幕開けを告げたこのスタイルは、世界的な大成功を収め50年代ファッションの方向を決定した。そしてディオールは、モードの都パリに吸引力を取り戻し、世界のファッションを牽引することとなる。

デザイナークリスチャン・ディオール

ブランドクリスチャン・ディオール

レーベル無し

素材・形状特徴深緑のベルベット。カフは豹の毛皮。左右の胸とポケットに金糸、シークイン、ビーズ刺繍。黒いスエードのベルト。

収蔵品番号AC10425 2001-1-1AB

デイ・アンサンブル
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

デイ・アンサンブル1956年秋冬

第二次大戦後、シャネルの復帰間もない頃の作品。ブレード飾りは、シャネルのロゴやライオンのモチーフの金ボタンなどと共に、戦後のいわゆる「シャネル・スーツ」の重要なディテールの一つとなった。
第二次大戦でメゾンを閉鎖したシャネルは、1954春夏コレクション、71歳でオートクチュールに復帰した。パリでは戦前と変わらぬ彼女のスタイルは、「古臭い」として必ずしも評価されなかった。しかし戦後、世界の経済、文化面をも牽引するようになったアメリカの女性たちは、ビジネスにもフォーマルな場面にも対応する合理的でシックな、いわゆる「シャネル・スーツ」を歓迎したのである。また、アメリカの既成服会社にパターンを販売し、シャネル風のスーツはアメリカから世界へとひろがっていった。

デザイナーガブリエル・シャネル

ブランドシャネル

レーベルCHANEL

素材・形状特徴紺のウール・ジャージーのジャケットとスカート。白の毛糸のブレード飾り。袖口に共布のくるみ釦。

クレジット・ラインニューヨーク州立ファッション工科大学寄贈

収蔵品番号AC4812 84-10-2AB

ボディス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ボディス1988年秋冬

彫刻のようなボディス。ボーンの入ったタイトな身頃から、針金入りの大きな衿が大胆にドラマチックに立ち上がっている。大きな肩と立体的な構成を特徴とした1980年代の様式に則った、ラクロワのオートクチュール作品である。
伝統回帰が鮮明になった80年代、ラクロワは87年、LVMHの傘下において、パリでオートクチュールのメゾンを設立。大学で美術史を専攻した彼は、18世紀のドレスや19世紀後期のバッスル・スタイルなど、奔放な造形性をもつ歴史的な衣装をポストモダン感覚の現代服として大胆にアレンジして沈滞していたオートクチュール界に新風を吹き込み、88年からはプレタポルテも手掛けて注目された。しかし2005年、LVMH社はラクロワ・ブランドを売却し、09年、ラクロワはオートクチュール、プレタポルテから撤退した。

デザイナークリスチャン・ラクロワ

ブランドクリスチャン・ラクロワ

レーベルCHRISTIAN LACROIX

素材・形状特徴ダーク・ブラウンの絹ファイユ。身頃にボーン、衿には針金が挿入されている。

クレジット・ラインクリスチャン・ラクロワ氏寄贈

収蔵品番号AC6890 90-47-1A

コート
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

コート1963年

ケープ・コート。肩線のなだらかなカーブや量感が新しい服の造形を見せている。この形を可能にしたのは、身頃から裁ち出したケープの前と後ろを肩の別パーツの嵌め込みを用いて一体化させるという、衣服構成における独自の発想である。接ぎ線を最小限にとどめ、厚みがあるウール地の特性を生かして立体的に仕立てたバレンシアガの技が冴える作品といえる。
50年代のチュニック・ドレスやサック・ドレスに代表されるように、バレンシアガは60年代に顕著となる形態の単純化を早々に実現し、過去の引用や流行の踏襲ではない新たな造形を開拓した。本品においても彼独自のシンプリシティが遺憾なく発揮され、彫刻のような造形美を見せている。そうした新しい服の形を具現化することができたのは、誰にも真似できない彼の裁断技術によるところが大きかった。

デザイナークリストバル・バレンシアガ

ブランドバレンシアガ

レーベルBALENCIAGA 10, AVENUE GEORGE V. PARIS 86550

素材・形状特徴アイボリーのウール・ツイル。前身頃に10個の釦。

収蔵品番号AC6716 90-16-17