ドレス2007年春夏
ドレス全体にひらひらと、まるで花弁のように揺らめくオーガンジーの布片には、2種類の髑髏と骨のモチーフがヒートカットで切り出されている。モチーフは数枚が重なって1セットとなり、ドレス全体に縫い留められている。手間のかかる精緻な手仕事と共にヒートカットという技法が可能にしたアンダーカバーらしい過激な装飾性が隠れている。 高橋盾は、このシーズンについて、「アンダーカバーは非常にダークなものを創造してきたが、今、私は女の子のために美しい何かを作りたかった」と語っている(『Style.com』2006年10月1日)。「かさぶた」(03年春夏)、「but Beautiful...」(04年秋冬)、「guruguru」(06年秋冬)等のテーマを掲げて、パンク・テイストの強いストリート・ファッションをアンダーカバーは発表してきた。パリ進出4年目のこのコレクションで高い評価を受け、注目を集めるブランドとして飛躍を遂げた。
デザイナー高橋盾
ブランドアンダーカバー
レーベルUNDERCOVER
素材・形状特徴赤のポリエステル・オーガンジーのホルター・ネック・ドレス。全面に髑髏と骨型にヒートカットした同色のポリエステル・オーガンジー。
収蔵品番号AC11623 2007-5
ボディス1980年秋冬
女性の美しい胴部を彫塑したようなボディス。スーパーリアリスティックな表現は、マネキン・メーカーの協力のもとに人体から鋳型をとって作られた。無機的なプラスチックが身体の弾力的な物質感を強調し、身体を隠しながらも艶めかしいまでに身体の存在を意識させる、三宅の1980年代を代表する作品である。
本品は80年秋冬パリ・コレクションのフィナーレで発表され、80年代のボディ・コンシャスなファッションの幕開けを宣言した。1982年には籐とビニール製のビュスティエ、1985年「シリコン・ボディ」などの一連の作品が発表され、それらは83年から85年にかけて世界各地で開催された「ISSEY MIYAKE BODYWORKS」展の中心的な存在となった。
デザイナー三宅一生
ブランドイッセイ・ミヤケ
レーベル無し
素材・形状特徴赤いプラスチック。裏はエンボス加工。
クレジット・ライン株式会社三宅デザイン事務所寄贈
収蔵品番号AC5643 87-25A
ドレス1993年秋冬
ヴォリューム感あるフラウンスの波が躍動的なフォルムを作り出している。帯状のナイロン・ネットを螺旋状に縫い重ねて巨大な円を作り、それを二つ組み合わせた独自の構造が立野らしい。
1980年にロンドンに移住した立野は独学でファッションを学び、既成の素材や裁断に捉われることなく、独自の方法で服作りに挑んできた。1983年開始の「カルチャー・ショック」を経て、「コージ・タツノ」(1990-94年)でパリ・コレクションに参加。プレタポルテに携わりつつも、一点もの、アート志向の服を発表した。2003年からは、「グレ」のプレタポルテ・ラインを担当したこともある。
本品は、96年の映画『ピーター・グリーナウェイの枕草子』の主人公の衣装としても採用されている。
デザイナー立野浩二
ブランドコージ・タツノ
レーベルKOJI TATSUNO
素材・形状特徴コッパー・ブラウンのナイロン・ネット。
クレジット・ライン立野浩二氏寄贈
収蔵品番号AC12207 2010-8-1
ドレス2000年春夏
渡辺淳弥は新素材を探求し、その特性をデザインに最大限に発揮する。不思議な質感を持つ本品には、彼の力量がよく表れている。ポリプロピレンの鱗をまとったシンプルな筒型ドレスは一見すると無機質な雰囲気を持っている。しかし、体の動きにあわせてたわむ時、質感はがらりと表情を変え、見る者の気持ちをざわめかせる。彼は通気性と撥水性を高める特殊な糸と、その組み合わせや染め方を選び、肌触りが良いような織り方に配慮してハイ・テクノロジーでファンタジーにあふれた服に仕上げた。このシーズンのショーは「洗濯80回にも耐えうる」(『繊研新聞』1999年11月8日)という撥水性を証明するため、ランウェイに人工的な大雨を降らせるという奇想天外な、楽しい演出となった。
デザイナー渡辺淳弥
ブランドジュンヤ・ワタナベ・コム・デ・ギャルソン
レーベルJUNYA WATANABE COMME des GARÇONS
素材・形状特徴オレンジ、グレー、茶のチェックをプリントしたポリエステル平織りに、ひだ状の透明フィルムを全面に縫い付けたドレス。共布のフード。
収蔵品番号AC10284 2000-6-15A
ドレス1989年秋冬
薄い絹シフォンに日本独自の文字である平仮名で和歌が、流麗かつ大胆に配置されている。毛筆による墨文字は反転して黒地に白く浮かびあがり、緩やかな筆致の印象を一層際立たせている。直線的なドレスやふわりとした袖に書かれた縦書きの文字列は、身体の動きに合わせてゆらゆらとゆれる。
きものに文様と併せて漢字や平仮名を置くという意匠は平安時代から始まり、17世紀ごろから流行が広がった。以降、粋な表現として度々現れた。詩歌や物語からデザインの題材をとることが多いきものに、文字は意味を伝え、意匠を楽しむものとしてしばしば登場する。本品は文意から離れ、和歌の一部をデザイン化している。
1965年にニューヨークで初の海外コレクションを発表した森は、当初から日本の伝統美を意識したデザインを欧米の服に適合させ、欧米のメディアから注目を浴びた。1977年には東洋人として初めてパリ・オートクチュールへの参加が認められたが、その時に発表した作品にも墨絵や文字の意匠が見られ、森の作風を特徴づけるものとなった。
デザイナー森英恵
ブランドハナエ・モリ・ブティック
レーベルHanae Mori Boutique
素材・形状特徴絹シフォンに毛筆で書かれた和歌をプリント。
収蔵品番号AC13457 2016-28