© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

Collection 06

ポップアートの時代The Pop Art Era

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス「ザ・スーパー・ドレス」1966年頃 - アメリカ

1960年代を特徴づける、不織布製の「ペーパー・ドレス」。明快な形態、ミニ丈、グラフィカルなプリントなど、この時代の流行の要素が織りこまれた、アメリカ製の安価な使い捨ての服である。
ペーパー・ドレスは、使い捨てを標榜した60年代の大量消費社会を象徴する服である。そこにプリントされているのはキャンベル・スープ缶。言うもでもなくポップ・アートの旗手、アンディ・ウォーホルが作品に採りあげ、広く氾濫した、いわばコピー・アートのドレス版である。そのウォーホルも66年に「バナナ・ドレス」「フラジール・ドレス」などのペーパー・ドレスを制作した。

    デザイナー不詳

    ブランド不詳

    レーベル無し

    素材・形状特徴キャンベル・スープ缶のプリントを施した不織布のミニ・ドレス。衿あき、アーム・ホールに黒いバイアス・テープ。

    収蔵品番号AC9561 98-14-2

ドレス[左]<br>ドレス[右]
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス[左]
ドレス[右]
1965年頃[左]
1968年頃[右]

1960年代のアートとファッションの関係を特徴づける既製服二点。
大衆消費社会が本格的に始まった60年代、アンディ・ウォーホルが牽引し、大量消費社会のありふれた品々を題材にしたポップ・アート、ヴィクトル・ヴァザルリやブリジット・ライリーらが中心となり、目の錯覚を研究・応用したオプ(オプティカル)・アートなど、アートは大衆の心をつかんだ。オートクチュールではサンローランがいち早くこうした新しいアートをファッションに取り入れたが、到来した既製服の時代、安価な既成服が特別な輝きを放ったとき、既製服にもアートがひろがった。アートとファッションは大衆という新しい対象によっても新たに繋がり、強い関係を築いていく。

デザイナー不詳[左]
ハリー・ゴードン[右]

ブランド不詳[左]
ポスター・ドレス[右]

レーベル無し[左]
POSTER DRESS[右]

素材・形状特徴ビニールに白と黒のオプ・アート・プリント。Aラインのミニ・ドレス。スタンド・カラー、ファスナー。[左]
ポップ・アート風プリントを施した不織布のAラインのミニ・ドレス。[右]

収蔵品番号AC10221 99-39 [左]
AC9754 99-1-1A [右]

ドレス、コート
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス、コート1965年頃 - アメリカ

ポップ・アートの旗手、ロイ・リキテンスタイン(1923-97)の絵をテキスタイルに配した本品は、後身頃に《日の出》(1965)が大胆にプリントされたドレスと、図柄をまったく配さないアイボリー単色のコートのセット。1965年にパリのイレアナ・ソナベンド・ギャラリーで開催されたリキシュタインの展覧会のオープニング・パーティーで、彼の友人レッティー・ルー・アイゼンハワーが着用して話題をさらった。リキテンスタインが美術界の寵児として名を馳せていた時期に作られ、彼のトレードマークであるベンデイドットと署名が入った着るアート作品。それは、あたかもこのドレスが「絵画」であり、コートがお披露目前の絵画に掛けられた「白布」のような演出効果をもらたす、新作発表そのものであった。60年代、アートと生活はかつてなく互いに距離を縮めた。リキテンスタイン、ウォーホルといった気鋭のアーティストたちは当時の活き活きした空気を映し出すファッションを媒体に選び、自らの表現を街へ送り出した。

デザイナーロイ・リキテンスタイン(テキスタイル)、リー・ラッド・シンプソン

レーベルroy Lichtenstein

素材・形状特徴白の絹サテンのワンピース・ドレス。ロイ・リキテンスタインによるシルク・スクリーンプリント。全面に赤の水玉、背面に太陽と雲の柄。前中心および脇明き。コートはアイボリーの絹サテン。

収蔵品番号AC11545 2006-14AB

ドレス
© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

ドレス1967年頃

アルミニウム製のミニ・ドレス。パコは「メタル・ワーカー」と異名をとったオートクチュールのクチュリエ。金属という無機的な物質と柔らかな皮膚の質感の対比が提示されている。SFのアンドロイドのような硬質な皮膚の輝きを想わせる、60年代の記念碑的な作品である。
1960年代は、宇宙工学をはじめとする先端科学の目覚ましい成果を背景に、あらゆる分野が伝統的な技術や素材を捨てて新しい技術に挑戦した時代だった。66年にプラスチック製ドレスを発表したパコは、服は布で作られるという常識をくつがえし、その後も、金属、不織布などの新しい素材に挑戦して時代の寵児となった。

デザイナーパコ・ラバンヌ

ブランドパコ・ラバンヌ

レーベル無し

素材・形状特徴銀色のアルミニウム板を真鍮の金具でつなぎ合わせたワンピース・ドレス。

収蔵品番号AC9472 97-23-3

ドレス「モンドリアン」
© The Kyoto Costume Institute, photo by Taishi Hirokawa

ドレス「モンドリアン」1965年秋冬

20世紀の大デザイナーの一人、サンローランの代表作である。直線的なAラインのドレスに、黒い直線で分割された大胆な原色の配置は、オランダの画家、モンドリアンの代表作《コンポジション》の引用である。画面上で分割された白、赤、黒による抽象画は、ラシーヌ機による特殊なジャージーのはぎ合せによってドレス上に表現されている。簡潔なフォルムながらそれを身にまとう女性の身体をほのかな陰影の中に浮き上がらせる、オートクチュールの高度な裁断技術が伺える。美術収集家としても知られたサンローランは、《コンポジション》も収集していた。
ディオールを退職後、1961年に25歳の若さで自らのメゾンを立ち上げたサンローランは、オートクチュールと新興勢力のプレタポルテがせめぎあい、ファッションが移り変わろうとする中、新しい時代の要請を的確に見抜き、次々と斬新な作品を発表した。本品発表の翌年、66年にはプレタポルテのブティックを開店。Aラインのミニ・ドレスやパンツといった、現実の生活に即した若々しいファッションを発表して世界的な人気を得、20世紀後半のファッションを牽引した。

デザイナーイヴ・サンローラン

ブランドイヴ・サンローラン

レーベルYVES SAINT LAURENT PARIS

素材・形状特徴ラシーヌ機によるウール・ジャージーのワンピース・ドレス。白に赤、黒をはぎ合わせ。

クレジットイヴ・サンローラン氏寄贈

収蔵品番号AC5626 87-18-1