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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ポンチョ、トップ、マスク、ベルト、ブーツ

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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ポンチョ、トップ、マスク、ベルト、ブーツ

2009年秋冬

デザイナー
髙島一精
ブランド
ネ・ネット
レーベル
Né-net
素材・形状特徴
緑のウール/アクリル混紡のジャージーのポンチョ。青いアセテート・ニットのトップとレギンス。マスクは化繊ニットにパテント・レザーのアップリケ。ベルトは合成皮革にメタルとラインストーンの装飾。合成皮革のブーツ。
クレジット・ライン
髙島一精氏寄贈
収蔵品番号
AC12151 2009-42AI

後ろ前に着たポンチョにプロレスのチャンピオンベルト風のベルトを巻き、ドレスのように着こなしている。ポンチョは緑色のジャージーのマクラメを基礎に、覆面レスラーの頭部をモチーフにした小さな人形を7段にわたって編み込んでいる。鮮やかな色彩やモチーフはメキシコで盛んなプロレスを、その手仕事は南部チアパス州で作られる布人形などの味のある手工芸品を想起させる。化繊ニットのマスクやレギンスというスポーティな要素と、素朴な装飾性が同居した点が独特である。
本品は髙島一精(たかしま かずあき)が2005年から2020年までデザインを手がけた「ネ・ネット」の2009年秋冬コレクションで発表された。コレクション・ショーは格闘技の聖地として知られる後楽園ホールを会場とし、冒頭には現代のヒーロー、バラク・オバマ米国大統領(在任:2009-2017年)の就任演説の音声が流れた。「ムテキになりたい」をテーマに力強いヒーローへの憧れや共感が表現されたのは明らかだが、ステージ上では遊園地でよく見られるぬいぐるみ型の電動カートがのんびりと行き交った。力強さとゆるさ。対立しそうなイメージを共存させた点が髙島らしい。彼は黒猫の「にゃー」を初めとする愛らしくも奇妙な独自のキャラクターたちを生み、それらを成人男女に向けた日常着に組み込むなど、肩肘張ることなく、性別や年齢に結び付けられた既存のイメージの境界線をずらしてみせた。

2000s