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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ジャケット、トップ、パンツ

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

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ジャケット、トップ、パンツ

2004年春夏

デザイナー
ヘルムート・ラング
ブランド
ヘルムート・ラング
レーベル
HELMUT LANG
素材・形状特徴
銀色のパテントレザーのジャケット。フィルムと王冠の装飾。茶の化繊ニットのタンクトップ。パンツは黒の化繊ポプリン。
クレジット・ライン
ヘルムート・ラング寄贈
収蔵品番号
AC12288 2010-11-75AI

ダブルブレストや斜めに走るファスナーなど、ライダース・ジャケットのデザインを踏襲したジャケットを中心にしたルック。ジャケットのパテントレザーは滑らかな銀色に輝いている。ただし、袖や身頃の一部には青やピンクのフィルムがランダムに貼られ、皺だらけのざらついた質感に変換されている。左身頃を中心に装飾されているのは、平らに潰された68個の王冠。いくつかは錆び、いくつかはペイントされ、裏表とりまぜて縫い留められている。王冠の表面に糸を渡したり、渡さなかったり、縫い留め方にも統一感がない。これら拙い手仕事のような装飾は、クール、スタイリッシュ、派手といった、眩く輝くジャケットがもたらす印象とは対極的に見える。
オートバイ用の服だったライダース・ジャケットは、1950年代以降、若者の間で街着として人気を獲得。70年代後半には、権威への対抗を謳うパンクの若者たち(パンクス)にも愛用され、そのイメージはひろく拡散された。本品に施された粗削りな細工は、安全ピンや鋲、缶バッジやビニール袋など、身近で安価な素材を使って自らの服をカスタマイズしたパンクスたちの「Do it yourself」精神と響きあうかのようである。また、人工的で未来的な輝きを放つパテントレザーと素人臭い手作り感の組み合わせは、安易な二項対立に組みせず、対立すると考えられてきた要素を一つの服に並置することを好んだラングらしい表現とも言うことができよう。

2000s