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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

ウエストコート

© The Kyoto Costume Institute, photo by Yuji Ono

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ウエストコート

2006年春夏

デザイナー
マルタン・マルジェラ
ブランド
メゾン・マルタン・マルジェラ
レーベル
0, 10
素材・形状特徴
トランプ・カードを集めて作られたウエストコート。ベージュの皮革のライニング。首と背中にベージュの絹リボンのベルト。
収蔵品番号
AC11625 2007-6-2AC

古びたトランプ・カードを素材としたウエストコート。ただしカードの劣化は、丁寧なエイジング加工による。まず、さまざまな種類のトランプのセットからカードを抜き出し、シャッフルする。カードは染めたり、ほぐしたり、アイロンをあてて劣化させる。そのカードをランダムに敷き詰めながら、ウエストコートの形になるように配置する。それをテイラー用のトルソーに着せ、熱処理を施してフォルムを固定。その後、柔らかな皮革で裏打ちをする。制作時間は14時間。手仕事でしかつくれない服である。
ベルギーに生まれたマルタン・マルジェラは、1989年春夏からパリでコレクションを発表。古着や使い古しの日用品を「アーティザナル(手仕事による)」な手法で服やアクセサリーに再構築して注目された。20世紀後期のファッション・システムは新しい既製服を絶え間なくしかも効率的に生み出すことを重視してきたが、この手法はそうした慣例への再考を促し、私たちの固定化した価値観を揺さぶった。
2005年秋冬、「アーティザナル」ラインは「メゾンの創造性を表現する基石」としてプレタポルテから独立。「0」(女性用)、「10」(男性用)に分類され、オートクチュールの時期に発表されるようになり、オートクチュールに倣って各作品の制作時間も公表された。09年にマルジェラの引退が公表され、14年にはジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクターに就任。ブランド名は「メゾン・マルジェラ」に変更されたが、「アーティザナル」ラインという呼称は継続され、ブランドの核として存在し続けている。

2000s