KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

イヴニング・ドレス

© The Kyoto Costume Institute

画像にマウスカーソルを乗せると拡大します。

イヴニング・ドレス

1981年頃

デザイナー
イヴ・サンローラン
ブランド
イヴ・サンローラン
レーベル
無し
素材・形状特徴
ワインレッドの絹チェンジャブル・タフタと茶色の絹タフタによるボディスとスカート。モスグリーンの絹タフタのサッシュ。白いナイロン・チュールのペティコート。
クレジット・ライン
ドミニク・ミライユ氏寄贈
収蔵品番号
AC13332 2015-37AE

全体を構成するワインレッドの絹チェンジャブル・タフタと、スカートの前面や袖口、裾などに施された茶色のフリルの組み合わせが印象的なイヴニング・ドレス。モスグリーンのサッシュと黒のベルベットの衿によって、さらに全体を引き締め、シックな色合いとなっている。レッグオブマトン・スリーブとペティコートによるスカート後方部のふくらみが、一見すると1890年代頃の作品のように思われる。だが、本品は現代芸術の画廊を営んでいたカヴェレス氏Mme Cavaillèsがエリゼ宮殿にて開催されたレセプション時に着用したとされる、イヴ・サンローラン[1936-2008]によるオートクチュールの作品である。
サンローランは1965年に、ピエト・モンドリアンのコンポジションを大胆に取り入れた作品によって大きな脚光を浴びた。翌年、彼はプレタポルテ・ラインを開始するが、その後もオートクチュール・コレクションでは高度なクチュール技術を用いて、パブロ・ピカソ(79, 88年)、フェルナン・レジェ(81年)、フィンセント・ファン・ゴッホ(88年)、ジョルジュ・ブラック(88年)、ポール・ゴーギャン(89年)などの芸術家(画家)へのオマージュ作品を発表し続けた。
80年代前半(80-84年)にかけてはアンリ・マティスへのオマージュ作品を発表しており、81-82年秋冬オートクチュールでは、マティスが1937年に描いた≪青いドレスの女≫(フィラデルフィア美術館所蔵)、あるいは≪鏡の前の青いドレス≫(京都国立近代美術館所蔵)を参考にしたイヴニング・ドレスを発表している。本品はこれらの作品と類似した型であり、同時期に作製されたものであると考えられ、サンローランの芸術家への憧憬と畏敬がうかがえる作品だといえる。

1980s