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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

『クーロス』

© The Kyoto Costume Institute

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『クーロス』

1981年

デザイナー
イヴ・サンローラン
ブランド
イヴ・サンローラン
レーベル
YVES SAINT LAURENT
素材・形状特徴
紙。多色刷りのリトグラフ。全16ページ。
編集:Mafia
寸法
38cm(縦)/28cm(横)
収蔵品番号
AL17615

本品はイヴ・サンローランの男性用香水「クーロス」発売時にプロモーション用として発行された。イラストおよびテキストはサンローラン自身によるもので、主に右ページにイラスト、左ページにテキストが印刷されている。古代ギリシャの直立青年裸像、クーロスから想起する香りを流麗な言葉で著し、彫像や神殿を洗練されたイラストで描き出した優美な作品集である。1500部限定で発行された。この形式は20世紀初頭のフランスで高級出版物の一形態となった、文芸とイラストを融合させたリーブル・ダルティストという手法に倣っており、風格のある趣と高級感を印象付けている。「香り」という可視化できない商品を訴求するためにプロモーションで特色やインパクトを与えるというハイ・ファッションのブランド戦略が垣間見えよう。本品のイラストは、1970年からサンローランが親しい人々に送っていた自作のグリーティングカードの手法であるコラージュや版画技法を踏襲している。マティスの切り絵版画を思わせる構図が数点見受けられるが、サンローランは80年秋冬コレクションでマティスへのオマージュ作品を発表しており、その関連性も指摘できよう。その後、80年代のサンローラン作品はゴッホやピカソ、ブラックといった絵画作品への親和性を一層強めていった。

1980s