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京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

イヴニング・ドレス

© The Kyoto Costume Institute, photo by Masayuki Hayashi

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イヴニング・ドレス

1910年頃

デザイナー
レディ・ダフ・ゴードン
ブランド
ルシール
レーベル
Lucile Ltd 17 WEST 36TH STREET NEW YORK
素材・形状特徴
ワンピース・ドレス。金ラメ・ゴーズ地に、紫の絹カット・ベルベットによる雲か霞模様の抜き織。金レース飾り。キモノ・スリーブ。スカート部は茶の絹ツイルに紫の絹オーガンジーの重ね。サッシュは黄と黄緑の絹ツイル。芥子の花のコサージュ付き。
収蔵品番号
AC13153 2014-29AB

袖ぐりの無いキモノ・スリーブ、帯のようなサッシュなど、きものから着想を得たルシール店のイヴニング・ドレス。1907年から1913年頃を中心に、フランスのファッション誌には浮世絵に描かれた美人のきもの姿(図参照)を参照したフォルムが多数現れた。本品は、彼らが呼ぶ「フォルム・ジャポネーズ」の典型である。ロンドン博物館は本品に似た特徴を持つ同店のきもの風コートを所蔵し(1911年頃、Inv. 94.78a)、同館は、その裁断や構成は「日本の抜き衣紋形式のコートの再解釈」であると解説している。
本品の着用者はマーガレット・O・D・ブラウン[1873-1911]。銅山王として知られるアメリカの大富豪マーカス・デイリーの娘である。1900年にボルティモアの銀行家ヘンリー・C・ブラウンと結婚し、ボルティモアとニューヨークの社交界を行き来した。本品は、ルシールのニューヨーク支店が開店した1910年のコレクションと伝わる。
ルシール店は、1893年、英国人のルーシー・サザーランド(レディ・ダフ・ゴードン)がロンドンに開店した高級仕立服店。1910年代には巨大な米国市場を睨んでいち早くニューヨークとシカゴに出店。富裕階級の女性たちに高い人気を得た。

1910s