KCIDigital Archives

京都服飾文化研究財団(KCI)の収蔵品から選りすぐった作品を、画像と解説付きでご覧いただけます。

イヴニング・ドレス

© The Kyoto Costume Institute, photo by Takashi Hatakeyama

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イヴニング・ドレス

1929年

デザイナー
マドレーヌ・ヴィオネ
レーベル
MADELEINE VIONNET DÉPOSÉ (fingerprint)
素材・形状特徴
アイヴォリーの絹シフォンのドレス。身頃に輪状のアップリケ。ネックラインから裁ち出されたカウル・ネックライン。ハンカチーフ・ヘムライン。
収蔵品番号
AC6420 89-21-3AB

身頃にアップリケされた抽象的な丸い花のモチーフや、スカート部のジグザク状パーツに見られる幾何学的な要素がアール・デコ期の装飾の典型ともいえるドレス。バイアス・カットを追求したヴィオネは、装飾にもバイアスの特性を活かした幾何学的なパーツを組み合わせた。円形、四角、ジグザクなど、さまざまなパーツの反復はデザインの調和を生み出すと共に、バイアスに留めつけられた布端部分が着用者の動きに連動した美しい揺らぎを作り出す。本品も、スカートの土台の上にジグザグ状の7枚のピースが段々に、それぞれにバイアス効果を得られるように留め付けられている。
伝統的な型紙作りは平面の紙の上でパターンが作られるが、ヴィオネは人体の1/2サイズの木製人形に布を直接当てながらモデル(雛型)を作った。これをもとにアトリエ主任によって実物大のトワル(仮布の試作品)が作られるが、ヴィオネが納得するまでトワルは何度もやり直された。熟練したアトリエのスタッフの手によって卓越した技術と時間を要して、まるでミシンで縫製されたかのように一針一針が規則正しく手で縫われ、本品のようなドレスがようやく完成した。

1920s